僕「今日のご飯おいしいね!」
母「・・・・(無言)」
僕「疲れてそうだから、手伝うよ」
母「あ、ありがとう・・・・・」
僕「皿も洗っておくね!!!」
「あ、疲れたと思うから、肩叩きでもしようか?」
母「いきなり何?別にそんなことしなくていいから」
そう母は最後に呟いた。
家に帰った時、小学生の僕は家で何が繰り広げられていたのかを瞬時に理解した。
父は家にいない。そして、母がぐったりと疲れている。
これはもう答えは1つ。
喧嘩である。
父と母が家で喧嘩をしていた。
そして、母がイライラしていた。
僕はただ怖かった。怖くて仕方がなかった。
怒られたのは僕ではないのに、何かをしてあげないといけないのかと思ったからだ。
だからこそ、小学生の僕は、「何かを手伝うよ!」とか、「皿洗うね!」と言わざるを得なかった。
母親が何を考えているのか、何で悩んでいるのか、それがすぐにわかったからだ。
別にあれこれ考えたわけではない。
なんとなく直感でわかってしまうのだ。
「この人は今、機嫌が良い」「この人今、怒ってる」「この人は嘘をついている」
それが昔から、わかってしまっていた。
直感が優れてるとか、心を読めるとか、見抜く力があると言うこともできる。
でも、僕はそれを便利だと思ったことはない。
むしろ、鬱陶しさしか、感じない。
だからこそ、色んな物を見ようとしてこなかったし、敢えて気づかないふりもたくさんしてきた。
僕は目を閉じざるを得ないと思った。
・・・・
僕 「ごめん、もしかして怒ってる?ごめん、本当にごめん」
彼女「え?(驚)」
僕 「いや、怒ってるよね。ごめんね、本当に昨日は、ごめん」
彼女「・・・・(無言)」
僕 「昨日のことだよね、ごめんね」
彼女「・・・・・・怒ってない!!!!」
僕 「え?」
彼女「怒ってないって!!!!もう、うるさいから!!!!」
彼女はそう呟いて、家を出て行った。
そのまま、彼女とは会ってない。
今、何をしているのかも知らない。
連絡先もこの前に見たら消えていた。
結局、僕は何も変わってない。
ずっとあの頃のままだ。
ああ、また気づいてしまった。。。。。。。。。
もう嫌だ、もっと鈍感だったら、どんなに楽なんだろう。。。
ただ、僕はふと考えた。
「昔っから、本当にあらゆることに気づいてきただろうか???」
「誰よりも気がきくと言われたことはあっただろうか???」
いや、否。
答えは真逆。
空気が読めない、気が利かない。
こんなことを何百回とそういえば、言われてたなあ。
でも、なんでだろう。なんであの時全然気付かなかったんだろう。
「ああ、、、そうだった、、、、」
思い出した。。。。。。
僕は・・・・
僕は目を閉じたんだ。。
僕は”その時”から感情を殺していたこと思い出した。
気づくことができない人が努力して気づくようになることはできる。
でも、気付ける人が、気付けないようになることは本当に難しい。
そして、気付くことは、何もいいことばかりじゃない。
苦しいし、見たくもないことを見ることになる。
気付かないためには、目を瞑るしかない。
目を瞑るには感情を殺すしかない。
なぜなら、目を開けていたら、自分の感情がもたないからだ。
まともに、感じてしまったら、自分がおかしくなってしまう。
だからこそ、感情を僕は殺した。
目を閉じた。
目の前で起こっていることの全てを見ないようにした。
誰がどんなことを考えているのか、何をしているのか、どんな思いでいるのか。
僕はそれを全て無視した。
感情を殺したのだ。
その結果、僕はたくさんのものを手に入れた。
そして、同時にたくさん失った。
だけど、その彼女のことを思い出して、すぐに気づいた。
結局、僕は小学生の頃から変わってない。
ずっとあの頃のままだ。
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